放射線透過試験(RT)は、X線やγ線などの放射線が物質を透過する性質と写真フィルムを感光させる性質を持つことを利用して、試験体に放射線を透過し内部の状態を撮影像としてフィルムに記録することで、試験体の内部傷の状態や内部構造を調査する非破壊検査方法です。

RTの特長は、内部の欠陥を高精度かつ視覚的に把握できる点です。例えば、溶接部の検査では、ブローホールやスラグ、不完全溶け込みといった欠陥を容易に検出できます。特に、半自動溶接やアーク溶接、被覆アーク溶接のような手法で加工された部品に適用されることが多く、溶接品質を保証するための重要なツールとなっています。

また、RTは幅広い材料や用途に対応可能です。金属製品や鋳物に加え、発電設備や石油化学施設といった重要インフラの品質管理にも活用されています。さらに、コンクリートの内部検査にも応用できる場合があります。これにより、建築や土木分野での安全性向上にも寄与します。

ドラムのRT
コンクリート壁のRT

放射線透過試験は、さまざまな産業で利用されており、その適用範囲は極めて広範です。特に、石油化学プラントや発電設備といった重要施設では、配管やタンクなどの構造物の検査に欠かせません。これらの施設では、内部の欠陥が事故やトラブルに直結するため、RTを用いた厳密な品質管理が求められます。溶接部の検査もRTの代表的な用途です。例えば、溶接管理において、溶接部のブローホールやスラグの有無を確認し、溶接品質の基準を満たしているかを評価します。これにより、製品の安全性を保証し、顧客の信頼を得ることが可能です。特に、土木建築分野では、鋼材の溶接部分の健全性を確認するためにRTが採用されることが増えています。

また、RTは精密な画像検査が可能なため、ドラムやタンクの内部状態を詳細に評価する用途でも利用されます。石油化学施設や石油化学プラントで使用されるこれらの部品は、圧力や腐食の影響を受けやすいため、定期的な検査が必須です。RTは、これらの欠陥を早期に発見する手段として最適です。コンクリートの内部検査も、放射線透過試験が応用される分野の一つです。ひび割れや空洞が疑われる場合にRTを使用することで、表面では確認できない内部状態を明らかにすることが可能です。これにより、建設現場や既存構造物の安全性評価がより精密になります。

RTの高い精度と信頼性を支えるのは、最新の装置と技術です。放射線源にはX線とγ線が使用され、それぞれ異なる特性を活かして対象物に最適な検査を実現します。X線は薄い金属や非金属材料に適し、γ線は厚みのある構造物に適用されるため、板厚や材質に応じた柔軟な対応が可能です。

また、検査の精度を高めるためには、適切な放射線の強度と照射時間を選定することが重要です。放射線の強度は、被検査物の材質や厚みに応じて調整され、得られる透過画像の解像度を最適化します。これにより、微小な欠陥や構造の異常をもれなく検出することが可能です。

放射線を扱う作業では、作業員や周囲の安全確保が不可欠です。放射線線量計を用いた線量管理を徹底し、放射線の影響を最小限に抑えるための安全対策を講じています。当社では、熟練した技術者が厳格な安全基準に基づき作業を行い、安心して検査をご依頼いただける体制を整えています。さらに、RTの適用には熟練した技術者の判断が求められます。欠陥の種類や大きさ、位置を正確に評価するためには、長年の経験と専門知識が必要です。当社の検査技術者は、豊富な経験と最新の知識を兼ね備えており、高い信頼性を持つ検査結果を提供します。

鉄筋コンクリート壁の透過試験
配管のさび